2010年で最も人気を集めているバンド、ドラムス。
結成自体まだ1年と少しという短いキャリアながら、今作で一気にスターダムに駆け上がった。
サウンド自体は非常にポップで分かりやすい。
リズムはニューウェーブ/ポストパンクから、メロディは50年代のポップスと60年代のサーフポップ。
そこに80年代のネオアコとネオサイケのサウンドスケープを載せているという感じだ。
基本的にこうしたレトロポップな作風は最近のUSインディにはよく聞かれる。
だが、彼らの場合、その他のバンドと決定的に違うのが、表現としてレトロポップを使っている点だ。
特にアルバム冒頭を飾るベストフレンドは、彼らの個性がそのまま出ている。
曲自体は、非常にポップでネオアコ風だが、詞を見てみると、もはやここにはいない友人についての歌だったりする。
そして、この感覚はアルバム全体に通念している作風でもある。
それは、つまり「もはや未来なんてどこにもないんだ」という刹那的な歌である。
彼らは過ぎ去った過去や素晴らしかったアメリカを歌やアートワークで表現する。
それはもはや失われてしまった時代を羨望し、ヘドロのような現実から逃避する若者4人の姿を描き出す。
90年代はグランジがノイズによって現実を暴き、00年代はヒップホップとガレージロックが言葉で若者の日常を描いた。
ドラムスはシンプルでサイケなサーフポップで今から逃避し、素晴らしかった時代へひたすら駆けていく。この現実から逃げるように。
3曲目に収められ、シングルにもなった「レッツゴーサーフィン」のコーラスで彼らはこう歌う。
「ママ、サーフィンへ行こうよ」と。
だが、今の世界にはキラキラした海も、優しい母親もいない。
故に、このアルバムはとてもロマンチックで残酷。そして、掛け値なしに素晴らしい。