「北極へむかった2隻の英国艦乗組員が突如襲ってきた恐怖の怪物と闘う」という単純かつ明瞭なホラーかと勘違いして読み始めてびっくり。まあ、ダン・シモンズだからねえ。それにしても、本作品はホラーというよりは、「八甲田山」のスケールを何倍も大きくしたような壮大な「遭難記」、それも大作です。
この2隻の船、テラー号とエレバス号は、実際に1845年にイギリスを出航したが、二度と帰ることがなかったという。数年後の数回にわたる調査によりやっとこの2隻の船の運命が判明した。そしてこの小説は、これらの史実に基づき、北米大陸の北で完全に氷に閉ざされ身動きができなくなった二つの英国海軍艦の乗務員が徐々に極限の寒さ、飢餓、そして病気に蝕まれていくさまが容赦ない描写で細かく、細かく描かれていき、仕舞にはこちらの神経もどうにかなりそうになった。
ノンフィクションではなく、小説であり、恐ろしい「怪物」も出るし、原住民の不思議な儀式なども出てはくる。しかし、怪物などでなくても、「遭難記」の部分だけで立派なホラーと呼べるだろう。
冬に読むと、心底冷えますが、作品の醍醐味を知る上では、やはり冬に読んだ方が良いと思われます。つらいけど。そして読み終えて、人間は簡単には死なず、そしてここまで追い詰められても、簡単にはあきらめないということに一種独特な感銘を受けました。