ソ連のチェルノブイリで原発事故が起こったのは1986年4月26日でした。この衝撃的な事件の後にRCサクセションは反原発的内容の替え歌「Love Me Tender」を録音しましたが、当時東芝EMIの親会社の東芝と電力会社に関係があったため圧力がかかり、1988年6月に「素晴らしすぎて発売できません」というコピーと共に発売中止になりました(結局シングル・アルバム共に1988年8月にキティより発売)。また当時飛ぶ鳥を落とす勢いだったブルーハーツも「チェルノブイリ」を発表できずインディーズから発売しています(1988年7月1日)。
こうした経緯のなかで結成されたキヨシローが率いる「謎の覆面バンド」がタイマーズでした。歌詞の内容は当時の世相との関連が強いものが多く、「Long Time Ago」は「反原発」、「偉人の歌」「ロックン仁義」はこの「発売拒否事件」を歌ったもの、「総理大臣」は当時愛人問題のため僅か68日で退陣した宇野宗佑総理大臣を揶揄した歌で、「カプリオーレ」はなんと1989年2月24日の昭和天皇の葬儀「大喪の礼」での高速道路封鎖などの騒ぎを嘲笑したものでした。
しかし、このアルバムの中ですごいのはやはり「3部作」でしょう。まず「深刻な問題(原発)」の存在を指摘し、次に「なにもかわらない」「あれ(反原発)はただのブームだ」と諦念を表明、最後に「ブームに便乗するぜ!」というふてぶてしく開き直る、というとんでもないメドレーとなっています。
反原発ソングの騒動に関しては(特にロック・ファンに対して)当時から「特に行動もしないくせに"反権力"の気分を味わっている」という非難がありましたが、この「3部作」はそうした批判を軽く飛び越えて超然としてたキヨシローらしい、痛快なロック的反論であったように思います。
なお、オトは70年代のRCサクセションとは異なる印象の、アコースティックをメインとしたもので、それもまた面白かったです。