ジャズ好きなら周知の事柄だが、『The Amazing Bud Powell』と題されたブルー・ノートのアルバムはvol.1からvol.5まである。ジャズ好きの大好きなオリジナルのレコード番号でいうと、BLP-1503、1504、1571、1598、4009ということになる。ちなみに録音はvol.1(1949年・51年)、vol.2(1949・51・53年)、 vol.3(1957年)、vol.4(1958年)、vol.5(1958年)となっている。ここで重要なのがパド自身が1951年8月から約1年半ピルグリム精神病院で電気治療を受けていた、という事実だ。この治療がパドをダメにしてしまう。つまりvol.1・2こそが希有な絶頂期のバド・パウエルの姿と言えるものなのだ。
治療後のパドは大江健三郎の『日常生活の冒険』や『厳粛な綱渡り』に登場してくる。パドはクラブ『サンジェルマン・デ・プレ』に実名で登場するのだが『病めるセイウチ』と表現されている。
このvol.5、特に『クレオパトラの夢』は天が与えた才能を電気治療のために急速に失いつつあるパドの最後の輝きなのだ。パドは1966年、長かったヨーロッパ生活から帰り、41才でこの世を去っている。