日本の図書館には朝鮮戦争の本は少ない。実は、英語圏の本屋にも、図書館にも少ない。驚くほどに。あっても軍事史的な、戦略、戦術を解説した本ばかり。(そして、昔の歴史書はイデオロギー的な観点で書かれることが多かったため、読むに耐えない場合もある。)著書は、朝鮮戦争の中に、ベトナム戦争と良く似た部分があり、関連があり、アメリカが何故ベトナムの泥沼に巻き込まれたかを理解するには、殆ど語られず無視されてきた朝鮮戦争史をひもとく必要があると言う。
本書は、実はあまり読みやすくない。戦闘の記述が多すぎ(特に下巻)、何が何だか分からなくなる。しかし、そこを我慢して読み進めば、日本人が神格視してきたマッカーサーの功罪(その神格化されたイメージは多分に本人と無能な取り巻きたちの演出によって作られたものだった。驚くべきアジアに対する無知と偏見。そして、多くの米国兵士を無駄死にさせた戦略的過ちが明かされる)、トルーマン、ケナン、アチソンらの再評価が必要であることが良く理解できる。
日本人読者にとっては、本書を通じて朝鮮戦争史を学ぶことは、沖縄の米軍基地の問題を理解する一助となるだろう。北朝鮮も中国も、別の体制になっておらず、現在も同じ国が戦争当時のまま継続している訳で、今後北朝鮮や台湾を巡って起こる可能性のある出来事は、過去の歴史と断続したものではないだろうから。また、海兵隊(辺野古に移る予定)と、陸軍の関係の複雑さについても、多少理解が進むかもしれない。
それにしても、韓国、朝鮮半島の人達がどのような辛酸をなめたかについては、日本の歴史書も、本書も殆ど記述していない(アメリカ人読者向けに書かれているから、当然かもしれないが)。結局一番悲惨な目に会いながら、南北の分断も自分の撒いた種ではないにもかかわらず、国土全体が焦土となり、国民の大多数が難民となったのに、戦史に殆ど記述されないとは。重ね重ねの不幸。