このコレクターズボックスのパッケージングに関しては、商品情報を参照していたことと『狂気』や『炎』のコレクターズボックスを見た後ということで、大した期待もありませんでしたが、これまでと異なっていた点がありました。CD1〜4が箱底部の取り付け位置にはなく、白い紙ケースに収められて箱に封入されていました。予想として、世界中で「開封したらCDが外れていて傷が付いている。」だの「指を入れる溝が浅く固定部が変なので、CDが取り出し困難。」だのといった苦情が製造・販売会社に寄せられ、急遽対策を取ったということではないでしょうか。本来ならば、しっかりしたCD・DVDケースを準備して、下箱もそれをうまく封入するようにデザインしたものを提供するべきでしょうが、発売までの時間不足でパッケージを新しく造り直せなかったのか、下箱は『狂気』や『炎』と共通のものを予定発売数作ってしまっていて作り直しはコストが掛かるということで取りやめになったのでしょう。せめて、無味乾燥な白い紙ケースではなく、絵を入れておいて貰えると、やっつけ仕事感が薄れたでしょうに。しかし、今回のおまけの中で、歌詞の書いてある壁ポスターは大変気に入りました。
CDとDVDの内容に関して、まずCD1・2は一聴したところでは前のリマスタリング版との差は私には余り感じられませんでした。音楽の内容は何度聞いても素晴らしいものです。『In The Flesh? 』が始まったと同時に作品世界に引き込まれます。CD3・4もいい。CD5・6はデモテープ音源てんこ盛りで中々面白い曲もありますが、『ファイナル・カット』や『ヒッチハイクの賛否両論』の曲も入っていて、これを聴いた後にまず思い浮かぶ感想は、『壁』がいかにロジャー・ウォーターズ主導の独占プロジェクトであったかということです。しかし、他のメンバーの貢献がなく、ソロで制作したとすればこのような素晴らしい音楽にはならなかったこともよくわかります。
DVDに関しては、『The Happiest Days Of Our Lives』のきれいなコンサート映像が入っていて、曲が終わり、盛り上がって来て、これから『Another Brick In The Wall, Part 2 』が始まろうかというときに映像が終わります。欲求不満にさせます。この画質に近い状態でのコンサート映像は残っていると予想されるので、将来、コンサートDVDが制作される可能性はあります。本来ならばこのボックスにフルコンサートの映像DVDをつけて目玉にするべきですが、今回は宣伝のみ、という商法でしょうか? 善意に解釈すると、フルコンサート映像DVDとサラウンドミックスのDVDは時間不足で制作できず、今回のボックスには入れられなかったということでしょうかね。
将来、『壁』のコンサートDVDやサラウンドミックスDVDを発売する際には、またぞろ【限定アルティメットコレクターズボックス】のようなかたちではなく、今回の購入者のために単体でそれぞれ発売するのがファンに対する良心的な製造・販売会社の姿勢というものです。
ところで、『壁』という作品を今回のボックスで初めて買ったという人は極々少数でしょうから、日本版についているライナーノートは、昔のものも再録するのではなく、しっかりと書いた2012年版のみにするべきですね。各曲の詳細な解説とデータ・年表・コンサート記録・映画の記録・裏話などをきちんと載せて、輸入版との差額分の満足感を与えてほしかった。
今回の一連のコレクターズボックスは、音楽は素晴らしいのに、パッケージングを含めた構成内容になると不満が出てしまう。ピンク・フロイドは作品が素晴らしいグループなのだから、オマケなんかはなしにして高品質の媒体のみを売るのがいい、という結論が私には導かれた今回のリマスタリングシリーズでした。