この手の本は、成功事例の要素を切り抜いて項目ごとにまとめたものにはあまり価値がない。
著者の主観が入り込み、またなんとか体系的にまとめようとするが故に陳腐になりがちだからだ。
むしろ、大事なのは物事の文脈であり、ささいな言葉や出来事の端々に含まれた細部であったりする。
都田建設は前から知っていて、蓬台という男がどのように考え、実行し、あれだけの組織を
作り上げたのかという点に興味があった。したがって私としてはできるだけディテールを含んだ紆余曲折の中から真実の部分を感じ取りたいと思っていたが、この本では都田建設はあくまで題材に過ぎず、中野氏によって「料理」されてしまっていた。私には中野氏の存在はむしろ邪魔でしかなかった。
内容的には都田建設のHPから読み取れるものが大半で、特別に目新しいものはなかった。
この本から何か新しい「気づき」を得るというよりは、すでに「気付いている」人が改めて
自分の方向性の正しさを確認するといった表現が適切だろうと思う。
「気づき」を求めるだけなら都田建設のHPを見るだけで充分だと思うし、その上でこの本
を読んでプラスアルファになる部分は少ないということ。
吉田繁治氏の『ザ・プリンシプル』のような奥の深い企業分析を期待していただけに、
やや期待外れであり、蔵書にするような本ではないと思った。