ドイツ滞在28年、内側からドイツを観察した氏の今回の著作は、優れた「日独比較文化論」そして「日本人論」ともなっている。現在、住むシュヴァーベン地方は、シラーやヘリダーリンそしてヘーゲルの出身地であるが、ドイツのなかでもやや特殊な地域のようだ。日本人からみたドイツ人、特にシュヴァーベン人はケチではあるが、住まいには固執し、サービス精神に欠ける。日独の価値観の違いはどちらがよいかといったものではないが、文化や伝統に基づくもので興味深いものである。日本語で話す時とドイツ語で話す時で同じ人間の人格が変わるという指摘が面白い。日本人にとって母国語としての日本語の重要性が理解できる。また、ドイツの教育制度の失敗について触れているがこれから日本の教育を考えるうえで大いに参考となるだろう。
災害時に略奪が起こらない日本は「世界の常識からすれば、不思議な国」だそうだ(因みに本書の出版は東日本大震災の前である)。今回の大震災でも被災者たちの整然とした行動は世界から驚きの眼をもって受け止められているようだ。
一方、指導者として外交関係に国益を踏まえて毅然として主張するメルケル首相についての記述がある。もっとも今回の大震災による原発事故により、ドイツの原発開発も影響を受けそうであるが。本書は、「日独比較文化論」であるだけでなく、国際化時代を生きる日本人への提言でもある。