副題は「顧客満足はリーダーシップで決まる」である。実際の接客は最前線の従業員が行うにしても、それを評価する土壌がなければならない。マネジメントは「従業員が顧客満足の意義に自ら気づいて、自分のためにそれを実践したくなる環境を作るべきだ」と言っている。「後工程はお客様」と言う言葉にあるように、本来は各人の意識を向上していくことが重要だが、本書ではそれをことさら強調しない。このあたりは啓蒙本としては巧妙な作りである。「不満を持つ顧客で苦情を言うのはごくわずか、あとは二度と来ない」「不満の経験や、苦情解決の経験は人から人に伝えられる」「ビジネスの中での最大のコストは顧客を失うことだ」など有名な示唆に富む内容だ。各章末に「まとめ」「アクションステップ」として実務への展開がしやすい工夫がなされている。事例も卑近だし、文章も分かりやすく誠実さを感じる。「サービス」と言う言葉は日本では「無償」「おまけ」的なイメージがあるが、本書では「サービスこそが仕事である」という信念を感じる。
唯一鼻につく点は、創業者や筆者が「経営者と従業員」という区別をするところだ。伝統のある同族経営会社だからなのかもしれないが、経営者というポジションと従業員という存在の大きな隔たりを全編から感じてしまい、やや気分が悪くなった。この感覚は馴染みにくい。