ときには魂を削るような気迫に満ちた演奏を聴かせたデュ・プレだが、ここでの演奏はなんとも幸福感に満ちていて、慈愛で心を優しく包み込むような気品に溢れている。協奏曲などの名演も素晴らしいのだが、私がデュ・プレに浸るのはこの演奏だ。落ち着いた時間を過ごしたいようなとき、これほどうってつけの演奏はないだろう。
チェロを愛する人にとっては、ひとつの理想の響きがここにあるのではないかと思える。
ジェラルド・ムーアのピアノがいい。デュ・プレのチェロのあまりにも美しい「歌」にしっかりと寄り添い、見事に調和した音楽を作り出している。こんな理想のパートナーに恵まれていたなら、デュ・プレの「名盤」は星の数ほど生まれていたに違いない。
ピアノ以外でも、バッハ(オルガン)、サン=サーンス(ハープ)、ファリャ(ギター)など、また違った趣の素晴らしい共演で、1枚のアルバムとしても通して楽しめる好盤。