この舞曲集は、18世紀のスペインのギタリスト、サンティアゴ・デ・ムルシアが、スペイン宮廷のために、当時舞踏の中心であったフランスの舞曲を、スパニッシュギター独自の奏法を用いて編曲した曲の数々ということである。
ギター愛好家にとっては、軽やかでかつ、おおらかさを感じさせるバロックギターの演奏が心地よいことであろう。
また、この時代の舞踏(バロックダンス)に興味のある人にとっては、この種の舞曲が往々にして演奏用の演奏でなされていて、実際に踊るには不向きな場合が多いのに比べ、この曲集は、実際に踊れるようなテンポや繰り返し回数で演奏されている点が興味深いのではないだろうか。
さらに、添付の解説には、ムルシアの音楽活動についての詳しい考察が掲載されていて、歴史的な興味もそそられる。ムルシアの作品集が、チリやメキシコで発見されていて、彼がメキシコに渡ったという説もあるが、まだ真実は謎である。いずれにしても、スペイン人が中南米大陸に進出して行った過程で、当時のヨーロッパの音楽や舞踏もまた一緒に海を渡っていたことは、当然と言えば当然なのだが、戦いや政治だけが歴史ではないのだと改めて感じさせられ、想像が膨らむ。
そして、このような分野別の興味とは関係なく、休日の午後などに、お茶を飲みながら心穏やかに楽しめる絶好の一枚でもある。