十篇の短編集。
このシリーズは、一年かけて、春夏秋冬の順に、季節毎に発刊されてきて、本書は、シリーズ最終巻の「冬」だ。
これまで、春夏秋と、順番に購入して読んできたので、最終巻も、読まないと気持ちが良くないので、とにかく読んだ。
ところが!である。
この短編集「冬」は、春夏秋と同等、または、それ以上に、内容が珠玉だ。
哀愁に貫かれた作品、希望に富んだ作品など、作品の内容は、様々だ。
特に、驚かされる展開の作品は、表題作「サンタ・エクスプレス」と「ネコはコタツで」だ。
このうち、「ネコはコタツで」は、老いた両親に対峙する物語で、特に傑作だと思う。
介護などの問題を含めて、この種の問題は、多くの人には避けて通れない、切実な、社会問題でもある。
物語では、老父が脳卒中で急死するが、この悲しい現実を、寝付かないで良かったと、解釈せねばならないあたりに、
非常に多くの社会問題が、凝縮されている様にも思う。
しかし、気がかりなのは、残されて、一人暮らしになった老母が、急速に弱ってゆくという現実だ。
息子夫婦が、同居を申し出るが、老母は、首を縦に振らない。
物語は、意外な形で、良い結末を得る。
しかし、身につまされる面が多く、深く、考えさせられる。
最終話「サクラ、イツカ、サク」は、大学入試の、合格発表の場が舞台だ。
浪人は許されない一発一本勝負は、相当なプレッシャーだったと思う。
この物語をもって、季節が一巡した。