■概略
上田ナオヤと児玉ちこは子供のころからの幼馴染で、同じ大学の同じサークルの部長と副部長。
ナオヤには子供のころ脳内に作った「サユリ」という架空の彼女が居る。
ところがナオヤのサークルの新入部員にその「サユリ」にそっくりな女性・大橋ユキ現われて・・・
主人公のサークルを舞台に巻き起こるドロドロの恋愛関係を背景に、大学生の青春を描いた作品。
■感想
最初はただ単にドロドロ恋愛を描いただけのものかと思ったけど、
どちらかというテーマは「大学生なら誰もが体験する葛藤や不安」なのではないかという気がしてくる。
例えば、ユキの「大学って、『自分の机』とか『自分のロッカー』とかそういうのがないでしょう?繋がれていない分『自由』にはなれたけど、その匿名性と引き換えに自分の存在がぽっかり宙に浮いてしまったような・・・」という言葉。
小・中・高と違い、大学に自分の固定席はなく、「そこに行けばいつもの仲間がいる」という場所もない。
(少なくとも、中高のように決まった座席と決まったメンバーがいることはない。)
授業が変われば一緒にいる友達の顔ぶれもガラッと変わる。
「いつもの、変わらぬ場所と変わらぬ友達」という拠り所が希薄になる。
大学内で一人になった時に感じる、「どこにいけばいいのかわからない」という感覚。
だからこそ、誰もがサークルやバイトに自分の場所を見つけようとするのだろう。
そして、物語のエピローグに流れるナオヤの言葉。
「『しっかり勉強しろ。4年間なんてあっという間だ』とうい言葉だけが、この先も繰り返し受けつがれてゆくのだろう。『何かつかまなくちゃ、もっと楽しまなくちゃ』 あせり、知ったかぶり、のたうちまわり、『青春』の脅迫のうちに、大学生活の4分の3が終わろうとしていた」
この一文は、まさしく「大学生なら誰もが体験する葛藤や不安」を表していると思います。
4年間しかない大学生活、就活とともに意識し始める将来、今を楽しまなければという焦り・・・
ひたすら「今」を生きるのに必死だった大学生が「未来」を意識し始める大学3回生の夏、そこに「恋愛」という人生における一つの大きなテーマを織り交ぜることによってリアルな大学生を描けています。
(まあ、ちょっとぶっ飛んでる内容だけど)。
■一般的見解
なかなかぶっ飛んだ行動をする登場人物が出てきますが、
大学の雰囲気や人間心理について諸所に共感を感じた人が多いみたいです。
青春ものは読んでてホント切なくなりますよね・・・
■総括
ぶっちゃけ登場人物の織りなす物語というかドラマは普通の作品という感じですが、
とにかく大学生の心情をうまく描ききった作品だと思います。
全5巻と量も少なめなので、ぜひご一読お勧めします。