いつもながら、星の数では計れない面白さがあります。
本書は、1991年、著者が谷口ジロー氏と組んで製作した、元フランス外人部隊の将校を主役とした冒険劇画「サムライ・ノングラータ」(小学館)と同タイトルだが、内容はまったく別モノ。
で、その正体はといえば、矢作俊彦氏と司城志朗氏の元ピンカートン・インヴェスティゲーション・コンビが1984年にカドカワノベルズよりリリースした「海からきたサムライ」を加筆修正したもの。
内容が「海からきたサムライ」であろうがなんであろうが、とりあえず二人が新本をリリースした以上、読まざるを得ないわけで。
じつのところ、「海からきたサムライ」については、旧作が出たときに読み、文庫化されたときに読み、あとハワイに行く前にはいつも読んだり持っていったりして。その新版を手にしても、「うーむ、せっかくこの二人の名前で出すのなら、新しい作品を読みたかったな」なんていう気持ちがないでもなかった。
で、読んでみると、やっぱり、まぁスゴイ。
スゴイところをイチイチ語る野暮はおいといて、とにかく加筆修正なんてものじゃないくらい手を入れられた冒頭からいきなり気持ちを鷲づかみにされて、まったく新しい作品のような新鮮な気分で最後までグイと一気に読まされてしまいました。
クラシックのミュージシャンが若いころにレコーディングした作品を、さまざまな経験を経た後、もういちど原点を見つめなおして新しい解釈でレコーディングをする作業にも似た感慨を抱きました。グレン・グールドがゴールドベルク変奏曲を、ミーシャ・マイスキーがバッハの無伴奏チェロ組曲を劇的なほどに新しい解釈を施して再びレコーディングしたように。
それはまさに20年あまりの時を経て、二人の名前で出すのにふさわしい魅力のある作品であり、その作品にていねいに加えられた筆には、まさに二人が歩んできた背景をしっかりと感じさせるものでもありました。
いいですね。こういう作品も。
というわけで、残る「暗闇にノーサイド」と「ブロードウェイの戦車」もぜひ。あと、欲を言えば、このノリで20年来の懸案となっている「コルテスの収穫(下)」なんかも書き下ろしてもらえたら。
ぜひ。