90年ころまでのサムソンの躍進は日本をロールモデルとしたもので、成功事例のいくつかは日本人のアドバイスによるものであることが、本を読むとよく分かってくる。現に、初代、二代目会長ともに早稲田大学で学んでいる。
国内の全電機メーカの利益を足しても及ばない業績を残す今のサムソンは確かに脅威に違いない。
これまでのサムソンは、ロールモデルがあって、すべての施策がかみ合った結果のうえに存在している。その過程は本書によって学ぶことができた。
しかし、その成功体験と、それを生み出した施策や企業文化は、低空飛行を続ける日本企業と明確に一線を画する本質的なものなのかどうか、それを確信できるような企業の本質までは本書では見えてこない。
激動する2008年以降の世界情勢の中にあっても常に時代にフィットしながら右肩上がりの成長が維持できるのか、これからも彼らの行動をウォッチするなかで、これまでの成功体験のなかに普遍的真理があったのかどうかを評価したい。
本書では、これまでのサムソンの成功を支えたものとして、李健熙氏の強力なリーダシップ、デザイン施策、人材施策、IMF危機を乗り越えたあとの韓国を包み込むムードなどが触れられている。とくに基礎研究には積極投資はせず、リバースエンジニアリングに頼っている、という件は印象的だった。