70歳近くになる叔父は、朱牟田夏雄先生に講習会か何かで『サミング・アップ』を教わったそうだ。英文解釈の面で学んだことも素晴らしかったが、エッセイの中味に目から鱗が落ちたという。16章と17章をガリ版で刷ったテキストだったらしい。朱牟田先生の弟子の訳者が、師の実現出来なかった全訳を完成したのだと知り、叔父に贈る前に読んでみたらすらすら読める訳なのに感心し、自分用にもう一冊購入した。私自身、大学で英語を教える身であるが、不必要に「実験的」な作品よりも、一見通俗的に見えてその実大人の智恵を盛ったモームの作品の方が、有益なのではないか、と思う。原作の味わいを活かしつつ、21世紀初頭の読者にもすっと頭に入る訳文に仕上がっている行方訳を、是非学生たちにも薦めたい。