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サマー・アポカリプス (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)
 
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サマー・アポカリプス (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書) [文庫]

笠井 潔
5つ星のうち 4.0  レビューをすべて見る (8件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

出版社/著者からの内容紹介

灼熱の太陽に疲弊したパリで見えざる敵に狙撃されたカケルを気遣い、南仏へ同行したナディアは、友人の一家を襲う事件を目の当たりにする。中世異端カタリ派の聖地を舞台に、ヨハネ黙示録を主題とする殺人が四度繰り返され……。二度殺された屍体、見立て、古城の密室、秘宝伝説等、こたえられない意匠に溢れる、矢吹駆シリーズ第二弾。

内容(「BOOK」データベースより)

灼熱の太陽に喘ぐパリが漸く黄昏れた頃、不意にカケルを見舞った兇弾―その銃声に封印を解かれたかの如くヨハネ黙示録の四騎士が彷徨い始める。聖書の言葉どおりに見立てられた屍がひとつ、またひとつと、中世カタリ派の聖地に築かれていく。ラルース家事件の桎梏を束の間忘れさせてくれた友人が渦中に翻弄され、案じるナディア。謎めく名探偵矢吹駆の言動に隠された意図は。

登録情報

  • 文庫: 535ページ
  • 出版社: 東京創元社 (1996/03)
  • ISBN-10: 4488415024
  • ISBN-13: 978-4488415020
  • 発売日: 1996/03
  • 商品の寸法: 14.8 x 10.6 x 2.4 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.0  レビューをすべて見る (8件のカスタマーレビュー)
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4 人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:文庫
 傑作である。読書の愉しみを知る総ての人に薦める。
 矢吹駆は、パリで、コルベールが編纂させた、異端カタリ派に纏わるドア文書の謎に挑む。協力者の下には、カタリ派の、黙示録の呪を記した脅迫状が届いていた。駆は銃撃されるが、調査のため、ナディアたちとともに、中世にカタリ派が繁栄していたラングドック地方に滞在することになる。滞在先である財閥当主の豪壮怪異な別邸で、ドイツ人が殺され、黙示録の呪は現実のものとなる。その後の連続殺人事件、ナチのオカルティズムが絡んだ知られざるサン・セルナン文書の探索と、事件は縺れに縺れた展開を見せる。
 舞台が整うまでは少し退屈したが、これ以上ない舞台が整い、紆余曲折ののち結末に至って、見事な解決に導かれる。オーソドックスなミステリーとしての完成度は高い。
 だが、最高だと思ったのは、論理的な展開自体ではない。オーソドックスなミステリーの味を楽しみながら、いつしか、様々な人生の描写に魅せられていた。話が進むにつれ、ちりばめられたガジェットと見えたものが、重みを持った実在性を帯びてくる。中世に異端カタリ派が繁栄していたラングドック地方の風土が、一人の男の特異な、だが毅然とした生き方を納得させる。その生き方が、弱さをもった者を誤らせる。愛されなかったという思いが憎しみに変わった時、犯行は準備された。ナチのオカルティズムが、思わぬ人を思わぬ形で、悲劇の舞台に立たせた。長い時間が流れ、多くの人にとって悲劇は終わったのだ。
 さて、前作から引き続く、純粋な悪に対する考察はどうなったのか? 少なくとも、駆は、前作と変わらず、思想的に対峙するものを追い詰め選択を強いる。作者は、駆に、そのような態度をとらせたが、その結果から考えると、結論を引き延ばしたようにもみえる。自明な悪に加担するものを前にして、どのような態度をとるか、ということであるが、その問いに対する時、必ず呼び込まれている秘教的要素を読む側としてはどう考えればよいか? それに対する評価の在り様が、ミステリーを超えた部分での、読者の評価を決めるに違いない。とはいえ、それは小説を充分堪能したのちに、心に留め置かれて、折に触れて考えてみる、といった形にならざるを得ないものと思う。
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形式:文庫
●この世界の本質が弱肉強食だと知った上で
なおかつ自分が強者の側に立っていると自覚した上で
それでもなお、弱いものたちの痛み・悲しみが、どうしようもなくわかってしまうとき
人は、己の存在をかけて決起するのかもしれません
そういう意味では、この小説に登場するシモーヌ・リュミエールは
ジャンヌ・ダルクにも、あるいはマザー・テレサにもなりえた存在でしょう

しかし、矢吹駆の抱え込む巨大なニヒリズムが、その欺瞞を暴きだします
上を読めばわかっていただけるかとおもいますけど
シモーヌの世界など、初手から矛盾をはらんだものなのであって
世界に蔓延する「悪」を相手するには、あまりに脆弱です
彼女は、「バイバイ、エンジェル」において殺されたある人物の、ある意味仇討ちとして
矢吹駆に論争を挑み、ほとんど完膚なきまでに粉砕されるのでした
まるでそう、聖女が悪魔に食い殺されるかのように

けれど、矢吹駆のニヒリズムは、現代社会において安穏と生きるすべての人
つまりわれわれ全てが、おそらく持ち合わせているものでもあるのです

●物語は、ヨハネ黙示録に見立てた謎の殺人事件を軸にして進行します
前作であれほど痛い目を見たナディアでしたが、
またしても今回、旅行先で起こった殺人事件に、首をつっこんでしまいます
途中、矢吹駆の探索する「カタリ派の秘宝」に胸ときめかせたりしつつ、
緊張感あるのかないのかよくわからない素人探偵に精を出すのですが
そんな中、今作では彼女の将来を暗示する、不吉な伏線がいくつも張られることになるのです

「あなた、若いのにいけないことよ。権力を背景に他人を思い通りにしようとするなんて」

シモーヌに叱られてしゅんとなるナディアですが、「青銅の悲劇 瀕死の王」における
力任せの容疑者尋問を思いだすかぎり、その反省が、後に生かされることはないのでした

●ところで、ラスト近くのあの展開は、映画「太陽を盗んだ男」を意識しているのでしょうか
このレビューは参考になりましたか?
26 人中、20人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By カスタマー
形式:文庫
笠井潔の矢吹シリーズといえば、思想対決が売りですが、この作品はまず本格ミステリーとして素晴らしい。緻密な作品構成はただただ感嘆するばかり。二度殺された死体の謎を解くくだりは鳥肌ものです。笠井潔の本格作家としての実力が良くわかる本です。また本作で対決している思想家はシモーヌ・ヴェィユです。
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