まず、この作者の絵が苦手であることを書いておく。10年以上前、ドラマ『
きらきらひかる DVD BOX』があまりにも素晴らしかったので、原作に挑戦しようとしたが、絵で挫けてしまった。それでも、題材を知り、挑戦する気になった。
ニートの青年が3人を殺害した事件の裁判の裁判員として主人公は選ばれる。主人公自身も、ネットカフェ難民であり、事件の直前に犯罪の誘惑にかられている。主人公は自分と境遇が似ており、趣味も同じ被告に興味をいだく。ただ、被告は自供しており、物証も揃っているので、裁判そのものは単純に思われたが…。
最終盤において、謎解きミステリの様相となるが、やはり裁判員裁判そのものがこの作品の主眼だろう。裁判員の選定過程や審理・評議・採決などが丁寧に描かれている。現実とどの程度の差異があるのかは不明だが、取材が丁寧にされていることも含め、十分に信頼できると思われる。
本書のように「死刑」を争う裁判の裁判員に選ばれる確率は、それほど高くない。しかし、どんな事件にしても裁判員に選ばれた時点で、人を「裁く」ことの重圧と対峙しなければいけないことは間違いない。だからこそ、裁判員だけでなくプロである裁判官・弁護士・検察官もそれぞれの立場で悩み苦しむ姿が浮き彫りにされているのだろう。
裁判員制度の知識を得ると同時に、人を「裁く」ことについて考えさせられる作品である。