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まず、感情。面白いとか悲しいとかの感情の理由は、自分が一番分かっているという思い込み。その思い込みを、認知的不協和理論や情動の帰属理論で覆します。要するに、自分の中で相容れない二つの認識があるとき、変化できる方の認識、すなわち感情を変化させてしまうということ(例 1ドル報酬実験)。また、情動の帰属理論とは、まず生理的・内的変化があって、その変化を生じさせた環境を自分で評価する事で、自分の感情を認識するということらしい(例 つり橋実験)。
もう一人の自分。自分の心の中には、自分でも認識できないもう一人の自分がいるらしい。その証拠について、分割脳の患者を使った巧みな実験を数多く紹介してくれます。
自由意志。本当に自分が自分の行動をコントロールしているのか? いわゆるサブリミナル効果などを例にとって、実は自分が選んだと思っている行動の多くが潜在意識からの影響を受けている事を指摘する。
この本を読むと、従来の人間観が覆されてしまって、得てして否定的な自分(自由意志がないとか、感情すら曖昧だとか)を考えてしまう。だけど、むしろポジティブに受け止めたいと思いました。プラトンの「メノン」で提起されたパラドクスのように、人間は自分が知らない問題を提起する事すら困難な筈であって、実は問題を提起した時点で、自分の中の潜在的なもう一人の自分は答えを知っているのではないか? 人類史上の大発明・大発見の多くは、夢の中やボーっとしてるときに生まれたといいます。自分で意識できない自分の心の中に、想像できないほどの可能性が秘められているのではないかと期待したいと思いました。
著者は知覚心理学の専門家。タイトルを見て、「サブリミナル効果」について書かれた本かと思う人もいると思いますが、違います(サブリミナル効果についても書いてありますが)。本書のメインメッセージは、「人間は思っているほど、自分の心の動きをわかってはいない」というもの。何が面白いかって、常識的な人間観が崩されていくところが面白い。外界からの刺激を認識し、順番に処理し、本人の「意図」に則って、意識的に行動を決定する、という常識的な人間観が、認知心理学、知覚心理学、神経心理学、社会心理学、あるいは心理学の関連分野で行われた多くの実験結果と食い違っていることが示されます。むしろそれらは、人間の多くの行動や意識内容が、意識されない潜在的な認知過程によって、決定されていたり影響を受けていることを示しています。
本書は、大学の「心理学概論」の授業の内容を一冊にまとめたものです。文章は、まるで授業を聞いているようで、ちょっとわからなくなりそうなところに「まとめ」があって、理解を助けてくれます。本の内容は心理学書としては異例に過激なのに、文章はとても読みやすい。非常に読みやすさに配慮されている本だと思います。
ガツンと一発ぶん殴ってくれる心理学書が一冊ここにあります。
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