本書は題名からして、コマーシャルの脳に及ぼす影響に関する最近の見地を解
説して最終的にはけしからん、といった趣旨の本だろうと甘く見て購入しました。
著者の専門は現役バリバリの知覚心理学、認知心理学の研究者で、私の見込みは
いい意味で裏切られました。巷に氾濫する密度の薄い新書とは一線を画しています。
論旨の根拠になるデータがMRIを用いて刺激に対する脳の活動部位を見出した結果
など新しく、研究者の方に言うのも僭越ですが、科学的な背景がしっかりしている
印象を受けました。
前半の3章はモノを売る立場から、人はなぜそれを買うのかについて、経験的に
知っていたことの裏づけを多く提示してあり、経験と科学的根拠が合致した点で
ためになったと思います。特に好感が持てたのは、それらの事実に対しての情緒的な
評価を加えず事実のみをある意味淡々と提示していた点です。
最終章の「暗黙知の海」に対する著者の仮説も私にとっては賛同できるものでした。
詳細は本書に譲りますが、その中で人間、勉強、経験した事は蓄積されてオリジナリティの
根っこになるということが言われています。そうしたことはたとえ忘れてしまっ
たとしても潜在知として残り、何かのトリガーにより新しい発想の材料になるそうです。
その点では読書好きの私にとって朗報といえます。