「魑魅魍魎が跋扈(ばっこ)するヨーロッパ市場では、ライバルの妨害工作の中で、非常に困難な交渉を強いられる場面は数多く存在する」。
サッカー代理人の実際の仕事や、その視点から見たヨーロッパや日本サッカー界について説明している本。著者はアルゼンチン生まれの日系三世。横浜マリノスで通訳として働いたことがきっかけで中村俊輔がイタリアへ移籍したときの代理人を務め、その後は、長谷部誠、長友祐都、岡崎慎治、阿部勇樹他、多くの日本人サッカー選手の海外移籍の道を切り開いてきた。
具体例は多くないが、ヨーロッパ各クラブとの交渉の舞台裏で学んだことを語っている部分は面白い。例えば、やり手のGMは手ごわいと思われがちだがそうではなく、能力のある人間は不必要に恐れることが無くて判断力もあるからむしろやりやすいそうだ。ドイツやイギリスは約束をきちんと守るが、ラテン系の国は1時間の遅刻は当たり前で、しかも笑顔で現れる。FAXなんか送っても見ないでシュレッダー行きだから、必ず電話する必要があるという。いずれにせよ、交渉ごとで楽観視して良い結果に至ったことは一度も無い、と断言している。
日本で評価の高いスペインリーグについて、少々辛口なのは意外だった。理由は各チームの近年の財政事情。金銭が絡む交渉を手掛ける代理人らしい視点だと思った。
選手のプライベートにかかわる話は少ないが、例えば長友については、移籍した最初の頃にイタリア人と1時間も談笑してるのを見かけて凄いなと思ったら、3つくらいの単語しか使ってなくて、この選手は日本人だけどラテン系だと思って感心したと書いている。移籍を希望する選手はじっくりりサーチし、特に長所を中心にアピールするのだそうだ。紹介ビデオの作り方や、成功するタイプの所見も述べている。近年、日本人選手のヨーロッパでの評価は高まっているが、売り込みに行けば話しを聞いてくれるようになったのであって、向こうから積極的に探しにくることはあまり無いという。FIFA公認代理人になる方法にも触れている。