この作品の要点は、著者のあとがきに記されていると思う。
「未来へと一歩を踏みだしてゆくとき、人には、希望が欠かせない。ゆえに、希望を奪われることほど酷いことはなく、希望を与えられることほど尊いことはない」
「サッカーボールの音が聞こえる」は、目の見えない人がプレーするサッカー・ブラインド・サッカーを取り扱っている。ただし、ブラインド・サッカーという競技そのものについて書いているわけではない。
主人公として登場する石井宏幸氏にとって、一般のサッカーやブラインドサッカーが「希望」となる物語である。
目を患い、満足に学校に通えず、鬱々としていた一人の青年・石井宏幸氏が、W杯予選のサッカー観戦を通じて視野を広げる。友人をつくることもでき、将来やってみたいこと、夢も描きはじめる。サッカーが、それまでの世界から、より広い世界へと、彼を連れだした。
その矢先、病が悪化し、全盲に。
しかし、今度は、ブラインドサッカーが、彼の心を開いた。
希望となるものに出会うこと、それが人生を変えるし、人生を豊かなものにする。
この作品は、そんな一例を示している。
欲をいえば、石井氏以外の視覚障害者の選手や、ブラインドサッカーをサポートしている人たちについて、もう少し読みたかった。