「スカウティングは試合に勝つためだけに行うのではない。選手一人ひとりの可能性を伸ばすため、チームを成長させるため、そして、スカウティングによって得られたデータを多くの人々が共有するために行うものなのです」。
「マイアミの奇跡」や日本が初出場した「フランス・ワールドカップ」やU-20日本代表でコーチとして活躍し、Jリーグの監督も務めた経験のある著者が、スコアリングという視点から、サッカーの戦術をわかりやすく説明している。
理屈だけでなく、多くの人の印象に残った試合を例にして具体的に解説しているのが特徴。よって、サッカーを理解する一助になるだけではなく、あのときは舞台裏ではこういうことがあったのか、という楽しみ方もできる。また、基本的に日本代表の試合や日本人選手を取り上げているので、海外サッカー事情にうとい人でもイメージしやすい。
「優秀な監督なら、試合に臨む際に少なくとも100通りぐらいの状況は想定しているのではないでしょうか」。
適時フォーメーションの図が入っていて、理解を助ける。決め手となるプレーは1つか2つ手前にあることが多いというような説明は、サッカー観戦を楽しむ時にも役立つだろう。また、選手を見るポイントについても列挙されている。
「どんなに素晴しい個性を持っていても、レベルが高くなるとそれを発揮させてもらえなくなるのです。もし、日本の中に、『基本』と『個性』が対局にあるもの、という認識があるとしたら、それは改めなくてはならないでしょう」。
当初は日本と世界との差は基本部分ではないところにあると思っていたのに、実はそうではなく、差はむしろ基本にあって、高いレベルの争いになるとその基本の質の違いがはっきり現れるということを実感した、と説明している箇所なども、とても印象に残った。