南アフリカの都市、ケープタウンの沖合11キロに浮かぶロベン島。「監獄島」とも呼ばれる小さな島はマンデラ元大統領ら政治犯を収監していたことで知られる。2007年7月18日、この島にサッカー界の「伝説たち」が集まった。神様ことペレ、オランダトリオの一人としてACミランの黄金期を支えたルート・フリット、アフリカ人初のバロンドールに輝いた「リベリアの怪人」ジョージ・ウェアら。彼らはマンデラの誕生日を祝うためにシュートを放ったが、同じように古びたゴールにボールを蹴りこんだ無名の男たちがいた。かつての政治犯たちだ。
著者は語る。「囚人たちが苛酷な環境にあっても意欲を失わず、政治活動への目的意識を保ち続けられたことにサッカーがどれほど大きな助けになったのかについては、国外ではほとんど知られていない」。この島には囚人たちが作ったサッカー協会があり、刑務所の管理者を説得し、毎週のようにリーグ戦を行っていた。サッカーは逆境の中で自尊心を取り戻し、刑務所の中で一体感を持つ、反アパルトヘイトの象徴だった。
W杯南アフリカ大会で選手たちが試合前、FIFAの理念に基づき、人種差別反対を高らかに唱える。本書を読むと、その一言が胸に迫ってくる。