「サザエさんうちあけ話」「サザエさん旅歩き」の愛読者には、
病弱で大人しい、町子先生の8歳年下の妹として知られる洋子さん。
上記の本でなじんだエピソードの数々も
洋子さんサイドから語られます。
内気で滅多に表に出ず、謎に包まれた一生を送られた
というのが、公のイメージとしての町子先生です。
しかし家のなか、特に洋子さんに対しては
暴君ともいえる激しい面を見せていたことがわかります。
洋子さんご自身も、人並み以上に才気溢れる女性であることは、
本書の文章から感じ取れますが
さらにさらに強烈な才能と個性をもった姉2人+母の元で、
大人しい末の妹としての立場に甘んじさせられ
足並みを揃えることを常に要求されてきた半生だったようです。
家族への感謝や尊敬とともに、人として抱いて当然の複雑な思いが
あちこちにかいま見え、興味深い記述が続きます。
特に印象に残ったのは、大学の進路のエピソードでした。
洋子さんは家のなかで一人、数学の才能があり、本人も理数系への進学を希望していたのに、
女子の理数系など、就職先もお嫁のもらい手もないからという理由で
家族、特に町子先生に、無理矢理国文科に進まされたというくだりです。
抵抗しても、家庭内での力関係で、とうてい適わなかったと。
当時の女性の社会進出の困難さがうかがい知れますが
しかし、そういう母と姉たちは、夫に頼らず就職に頼らず
自らの才能で独り立ちして
未踏の独立独歩を築いていた女性達だったわけで、
末妹へのこの仕打ちはやはり、釈然としないものが残ります。
「サザエさんうちあけ話」では、この出来事が
「大学通学時、2日(3日?)に1回は戻ってきてしまう、おっとりした妹」として
ほのぼのムードで描かれていますが
洋子さんの側から描いた文章を読んでみると、どうやら彼女は
行きたくもない学部に無理矢理進まされたストレスから
ご自分でも意識しないうちに身体が拒否反応を起こし、
行こうとしてもたどりつけなくなっていた、というのが真相のようで…
何ともいたましいです。
「藪の中」じゃないけれど、物事って必ずしも一方向だけからは見られないんだなと思わされます。