例えば春埼美空は無口でクールな美少女だ。
ライトノベルにおいては実にありふれた「属性」で、読者は「どっかで見たようなキャラ」と批判することだって出来なくもない。
「お約束」だと自分を納得させて、気にせず物語を楽しむことも出来なくもない。
だが河野裕はこの無口でクールな美少女を「お約束」の一言で済ませなかった。
「どっかで見たようなキャラ」をそれはそれは丹念に掘り下げて、どこまでも丁寧に描き出した。
そして春埼美空というキャラクタに、「属性」ではない「個性」を与えることに成功した。
この手付きの丹念さ・丁寧さこそが、そのままサクラダリセットシリーズの魅力であり、河野裕という書き手の資質だろう。
そういう意味で、この第3巻は実にサクラダリセット的・河野裕的な仕上がりとなっている。
エッセンスがコトコトフツフツと煮詰められ、これまでになく濃厚である。
「それほど好みに合わないが何となく読んでいた」という読者は、ここらでギブアップではないだろうか。
逆に、この3巻でギブアップしない読者は、きっともう物語の完結まで見届けるしかない。
……正直、2巻のラストで一気にボルテージが上がったのに「3巻は過去の話」と聞かされて、おあずけを喰らわされた気分だった。
しかしそれは全くの取り越し苦労だったようで、1巻・2巻を読んだ人は、ボルテージを上げたまま読んで大丈夫だ。
公式のあらすじ以上のネタバレは避けるが、「大丈夫」である。
コミックエースでの漫画化の方も楽しみだが、まずは4巻が予定通りに今冬発売となることを祈りたい。