ミュージカルなど観る習慣のない日本で、ふつうの人でも知っている(おそらく)唯一のミュージカル映画。今でも、音楽や英語の教材に使われているようだ。
この映画の成功は、主役のジュリー・アンドリュースに負うところが大きい。卓越した歌唱力(声域の広さ、音程の確かさ、豊かな声量)、ダンスのうまさ、見栄えのよさ(長身、美貌)、そして確かな演技力。
映画に使われている歌も、バラエティーに富んでいる。有名な「ドレミの歌」「エーデルワイス」をはじめとして「サウンド・オブ・ミュージック」「全ての山に登れ」「何かよいこと」は、テンポが速くないので、理解するのは容易だろう。「自信を持って」「私のお気に入り」「ひとりぼっちの山羊飼い」等はさすがに歌詞カードが必要。いずれにせよジュリー・アンドリュースの美声を大いに楽しむことができる。
しかし、この映画の本当の値打ちは脚本と演出の巧さだろう。人は悪くはないのだが、厳格で融通のきかない父親(クリストファー・プラマ)の対局に、自由奔放なマリア(ジュリー・アンドリュース)をもってきている。7人の子供たちは、12人目の家庭教師を追い出そうといろいろいたずらをするが、マリアの人柄に引かれてたちまちファンになってしまう。最初はマリアの教育方針にことごとく反対だった父親も、子供たちの生き生きとした姿をみて、マリアを認めざるを得なくなり、結局後妻に迎える。
マリアの価値観はふつうの人と変わらない。ただ、「たとえ苦手な相手でも自分の意見をはっきり言う」「他人に反対されても、自分が正しいと思ったことはできることから実行する」勇気と行動力が、ほんの少し優っていたにすぎない。
この映画がミュージカルファンを超えて幅広い層に支持された理由は、そこにある。