本書は簡潔にまとめられたサイード入門書である。インタビュー集なので大変読みやすい。サイードは、パレスチナ問題を中心として大活躍した知識人だが、彼の思想はしばしば誤解された。だが、この本を読めば、植民地出身のサイードのきわめて複雑なスタンスを正確に理解する手助けになるだろう。
さて、サイードは「オリエンタリズム」という概念によって一躍有名になった英文学者であり、帝国主義や植民地主義の文化に対して批判的であることはよく知られていた。だが、世間が誤解するのとは異なって、サイードは単純な反帝国主義者ではなかった。そのことを、我々は繰り返し本書で再確認することが出来るのだ。
たとえば、キプリングというインド生まれのイギリス人で、帝国主義的思想を支持した小説家がいる。ところがサイードは、帝国主義の辛辣な批判者であるのにもかかわらず、信じられないくらいにキプリングを絶賛しているのだ。「彼[キプリング]は、いろいろな種類の住民たちを信じられないくらい細かく描き分けられる。また彼は若者と老人とを描写することにかけて、すばらしい才能を発揮している」(本書の87頁)
サイードの特異な境地を理解するためにも、本書を一読することを強く勧めたい。