マイルスは離婚経験ありの中年英語教師。小説家志望だが書き終えた長編小説は出版のめどがたっていない。親友のジャックが間もなく結婚するため、彼の独身最後の一週間をカリフォルニアのワイナリー巡りで共に過ごすのだが…。
アメリカが得意とするロード・ムービーと中高年の危機とをほどよくブレンドした佳品です。
かねてから私は、アカデミー賞レースで秀作だけを候補に選ぶ力があるのは「脚本賞」と「脚色賞」の2部門だけだと見なしてきました。ですから2005年オスカーの脚色賞を獲得したこの映画は見逃せない一本といえます。物語の見事な展開と、小粋な台詞回し。見る側にもそれなりの人生経験と知性を求める手強い作品といえます。
旅先で出会うマヤがワインの魅力について語る言葉が象徴的です。
“I like how wine continues to evolve, like if I opened a bottle of wine today it would taste different than if I'd opened it on any other day, because a bottle of wine is actually alive. And it's constantly evolving and gaining complexity.”
もちろんこれは人生の暗喩。
マイルスの決して順風満帆とは言えない人生も、あした栓を抜けばきのうとは違う味がするかもしれない。だからこそ、たとえ谷続きに見える人生の中で絶対にやってはならないのは、人生の栓を抜くのをやめてしまうこと。
「結末がちょっと分からない」。マイルスの小説をそう評するマヤの言葉をなぞるように映画も幕を閉じます。この映画の結末の先に何を見るかは、この作品を見る一人一人の心にゆだねられているのです。
見事な映画です。