本書は著者の2作目にあたるとともに「妻と娘」シリーズの最初の作品である。
著者の処女作はベトナム戦争の終結であるサイゴン陥落迄の2週間を追った「サイゴンのいちばん長い日」である。著者は当時サンケイ新聞のサイゴン特派員としてこの作品を書いたのだが、そこにはベトナム国民(一般市民も軍人も政府高官も全て)の視点からみたベトナム戦争とサイゴン陥落が描かれている。
著者はそのサイゴン駐在時にちょっとしたきっかけから娘連れのベトナム人女性と結婚をしている。そして戦争終結後3人は東京で暮らし始める。
この作品では、日本人とは文化も考え方も違うベトナム人の妻娘との東京での日常生活の様子が描かれるとともに、ベトナム人の国民性、例えば食生活、親族との付き合い等が彼らの視線から描かれている。日本とベトナムの国民性あるいは文化の違いを知るのに恰好の作品ともなっている。
著者が妻と娘を見つめる眼差しはとてもやさしい。ベトナムと日本に対しても同様である。すべてを受け入れる人物である。
著者の文体は新聞記者出身のノンフィクション作家としては他の作家のそれとはチョット異なる。いい意味で小説的ともいえる情感豊かでユーモア溢れる文体である。この作品は彼の人柄と文体があわさることによって生まれた素晴らしい作品である。