本書はいわゆるポストモダニズムの興隆からグロス&レヴィットによる『高次の迷信』、そしてソーカル事件までの一連の論争を最初に持ってきているのだが、中盤以降は科学人類学やフェミニズム科学論など話題が多岐にわたっていて、ソーカル事件だけを扱っているわけではない。
ソーカル事件についての著者の立場はポストモダニズム側、と言うわけでもない。デリダやドゥルーズらを全く支持しないと明言しているのだから。しかしソーシャルテクスト誌には同情的である。この部分で著者が挙げるいくつかの弁護理由は、個人的に全く同意できない。たとえば編集者がインチキ論文を見逃したことを、多忙を理由に弁護できるのなら、編集者の存在意義そのものが問われるのではないだろうか?
おそらくソーシャルテクストに同情的なのは、ソーカルらに対する感情的反発の影響なのだろうが、しかしそうであっても全体の価値を損なうようなものではないし、本書はこの前後の論争を手際よくまとめている。また科学社会学、科学人類学の主なトピックを知るにも優れた一冊だと思う。