本職の物理学者(しかも超ひも理論の専門家)が、ガッツリ語るSF的ガジェットの実現可能性。
レーザー光線だのエネルギー・シールドだのといったものが、現在の理論的・技術的最先端からその延長
線上で、どれだけの実現可能性があるかを、かなりしっかり検討しています。
また、科学読本としても秀逸。
ゴリゴリのバリバリな数学とか物理学の先端理論のコッテリとした解説はなく、SF小説や映画に加え、文学
作品への言及も豊富で、読みやすく書かれています。コッテリとした解説はなくとも、自然界の四つの力が
それぞれどんな具合に取り扱われているかとか、余剰次元の巻き上げとか、異様に不自然な発見されす
ぎる素粒子だとか、反物質とは違う負のエネルギーとか、もしかしたらダークマターって・・・とか、本気の数学
を提示されたら「なんのことやらさっぱり」なお話しを、イメージ豊かに伝えてくれます。
折しも、欧州で世界最大の加速器の運用も始まり、素粒子方面で日本人がノーベル賞を受賞したり、
タイムリーでもあるので、著者が伝えてくれる最新動向には興奮しっぱなし。
さらにメインのSF的ガジェットの実現可能性にも他の同テーマの類書には見られない見所満載。
なんと「テレポート」とか「念力」の実現可能性が、比較的高めに判定されてますよ。
「超光速航行」の実現可能性なんて、「これがなんと「イエス」だ」とか言うので、もう耐えられません。
まったく不可能と目されているのが「永久機関」と「予知能力」のみで、それ以外のものは、あらかた(めっ
ちゃ留保条件つきながら)「物理法則に反しない」ので、不可能ではないらしい。うひー!
終章で、不可能だってのはどういうことよ?みたいな考察もあり、その科学的営為を楽観的に捉える態度
や、もう一歩踏み込めば、社会的・倫理的な考察に結びつきそうな部分もあって、単なるポップ・サイエン
ス読本には終わっていない点も指摘できるけど、そんなこんなよりも、ええええ、タイムトラベルって「物理法
則に反しない」のかよ!みたいな楽しい驚きに充ち満ちた一冊ですよ。
ライトセーバーがプラズマ・トーチってのにはガッカリながらも、人類の物理学と技術の進む先を見切れずに
あと数十年で死んでしまわなきゃいけないこの身がはがゆい一冊です。
蛇足ながら、いや原子モデルって便利な認識の方便なのであって実在してるわけじゃないよね、みたいな
とっちらかった社会構築主義が一部で根強く、自然科学者であると同時に哲学者でもあったエルンスト・
マッハを援用する向きもあるようだけど、マッハの時代にはボーアのモデルはまだ一般的に受け入れられて
いなかったとか。いろんな装置で観察されるものは、「原子そのものではなく、一定の輻射なりを、そのように
解釈されるもの」として観察しているにすぎない、とか言われますけど、なんか、すでに原子一個を直に
触ったり動かしたり(どころか反水素を創り出したり!)できるようになってるらしいッスよ!!