SFマガジンの連載をまとめたもの、という位置付けですが、違います。
あの連載を下敷きにした書き下ろしという感じです。
トピックとしては、iPS細胞やインフルエンザの遺伝学的な話があるかと思えば、宗教論、アスペルガー症候群などの高機能自閉にまつわる脳の話、そこから人間の認識の歪み、日米の法文化の差違にまつわる問題、ムーアの法則の意味するところ、金融における信用創造のこと等々々…これらがすべて、膨大な文献調査と独自の視点に基づいて描かれています。
ものすごく遠いところから全体を俯瞰しながら細かい指摘をしてくれすぎで、ちょっと人間業とは思えないです。インフルエンザの話は遺伝学的な話と公衆衛生の話がどっちも専門的、かつわかりやすく描かれています。どのくらいの知識レベルに基づいた話かといえば、自分の経験を書かせてもらうと、学者になるつもりでちゃんと勉強した知識が平気でアップデートされました。
それも単純に学者臭くひたすら科学的に書いているわけではまったくないのです。「頭いいけどヌボーっとした近所のあんちゃん」文体で、ページを次々にめくってしまいます。ネットの匿名性の話、お父上との最後の日々など、非常に人間臭いトピックもあります。それらもやっぱり膨大な知識に基づいて、人間の認識の話に還元していたりする。
他に似た本を読んだことがありません。まさに宇宙人のサイエンスエッセイ。
英訳してScientific Americanあたりに連載したらヒットするんじゃないかと、わりと本気で思います。