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16 人中、12人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 3.0
佳作だが傑作には至らず,
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レビュー対象商品: ゴーレム 100 (未来の文学) (単行本)
ベスターの長編は死後にゼラズニイが書き継いだサイコショップを除くと以上の5作品。1953:分解された男 1956:虎よ、虎よ! 1975:コンピューターコネクション 1980:ゴーレム100 1981:デシーヴァー 最初の二長編でベスターは伝説になってしまった。第一回のヒューゴー賞を受賞し、オールタイムベスト10に入る作品を書いてしまった。そして、SFから離れてしまい、生きたまま伝説になってしまった。 問題はその後である。生きた伝説がSF界に戻ってくることになり、SFファンはそれ相応の期待をして彼の作品を待ち望んで読んだ。残念ながら20年近い歳月を経て復帰したコンピューターコネクションは期待に応えきったとは言えなかった。 さて、此処で観点の問題だが、果たしてベスターの水準が落ちたのだろうか? それとも、ファンの期待が過大だったのだろうか? わたしはコンピューターコネクションのときには前者だと思っていた。ところが、本作を読んで少し見解が変わってきた。実はベスターはそれほど変わっておらず、ファンの方が勝手に過剰な期待をぶつけていたのかも知れないと思うようになってきた。 コンピューターコネクションにしても本作にしても、虎よ虎よ!と比較すると物足りないと思うのだが、もともとベスターはこんなものではないのだろうか。いずれの作品の時も出版社の付ける惹句は凄いのだが、それは出版社のセールストークだから止むを得ないとして、そのセールストークも基本的には「あのベスターの作品だぞ!」という点を一番プッシュしているような気がする。逆に言えば、過去の伝説に依存して売るのが今のベスター作品の売り方になってしまっているように思う。 実のところ、コンピューターコネクションであれば、サイバーパンクを予見したベスターの先見的長編と言う惹句であれば違った読み方ができたように思う。 本作にしても、ベスターの得意テーマである悪魔召喚や超常感覚を近未来の連続変死事件のミステリーに織り込んで彼特有のタイポグラフィー実験を究極まで推し進めた実験的長編と言う惹句であれば、その通りだと思うし、その通りだから別段文句を言う筋合いではないような気がする。 ところが、昔のベスターの伝説を引き合いに出されてしまうと、どうしても虎よ虎よ!に匹敵するようなものを読ませてもらわないとフラストレーションが溜まってしまうのだ。 上述したとおり悪魔召喚と超常感覚という得意アイデアを盛り込んだ近未来のニューヨークの連続変死事件を扱ったミステリーで、その内容でどうしてこんなに分厚くなるのかと思わせるが、厚さを苦にせず一気に読ませてくれる佳作である。ただし、佳作であって傑作とまでは呼びにくいので、伝説の男の復活長編という風に構えて読むといささか噛合わないだろうと言う気がする。
12 人中、9人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
知的にスタイリッシュかつ究極おバカ大集合!,
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レビュー対象商品: ゴーレム 100 (未来の文学) (単行本)
2007年で一番笑わせてくれた本です。新聞の絶賛書評を見て買ってはみたものの、ちょい高めで、面白くなかったら損かも…なんて心配は無用でした。作者が放送畑出身で、描写が視覚的に訴えてきます。キャラクターも国際的かつイロモノだらけ。まるで豪華なSFドタバタコメディ映画を観てるようで一気に読んでしまいました。ジョイス語とか解らなくても充分爆笑しっぱなしです。(一部の繊細な日本人男性は涙するかも)
13 人中、9人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
ゴーレム101乗とは性の超越、それは未来への希望か絶望か,
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レビュー対象商品: ゴーレム 100 (未来の文学) (単行本)
時は22世紀。広大なスラムと化した地区で起こる異常殺人。それは特権階級の女たち8人の私的な集まりでのお遊び「悪魔召還ゲーム」で現出した死神の手による物だった。無意識中に潜む本能的欲望、フロイトは「イド」と名づけたそれは彼女たちの知らぬ間に彼女たち、いや人類の潜在的欲望に応え発散するべく彷徨う。オカルト的理解で無く、深層意識にトリップ(薬物で)すべく、死の臭いを無意識化に感じ取る男と精神工学者の女にヒンズー教の高位者警官の主人公3人がこのゴーレムに立ち向かう展開。設定からして突拍子も無いのだが、中盤までは様々なアイデアの上手さや文学的知見、実験的文面に驚かされながら面白く読めます。しかし後半、無意識化の本能的欲望とは?それは個人の?女特有の?人類全般の?という、フェミニズムの見地から肯定的にまた批判的に、女王蜂を中心とする蜂の生態を人類を超えた新原人の誕生に擬し、その女王蜂が幻想的に世界を徘徊する描写は女性版「夢幻会社」の様でもあり、造語、新語、卑猥で奇怪な文体による言葉遊び的な文字の羅列に彩られた描写は凄まじい。もはや既存の文でも言葉でも無い(いや訳者によるとベスター版、ジョイス語)19章の文体は強烈。結局、この世を深慮する者なら誰もが考え、過去のSF作家も盛んに描こうとした現実社会の理想郷は何か?といった希望と絶望のテーマ。ベスター自身もオーウェルもバージェスも描いた物や「月は無慈悲な夜の女王」の様に現実世界の延長上、模倣もしくはパラレルワールド的な仮想世界の範囲でしか考慮し得なかった物よりも、精神世界から心身一体の人類の根幹を探り、その理想郷を掘り下げたとも取れる本作が語る黙示録は、男性社会から女王の世界を経て性の超越者による世界の幕開けとも取れる。世界を嘲笑する様な不真面目さと雑多なアイデアに彩られた暗雲の切れ間から差し込むのは希望の光かそれともサタンの誘いか?
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