表題作が密室ミステリとして優れていると言う評判を聞いて、手に取った本書ですが、その独特の作品世界に強く惹かれました。
サンフランシスコ郊外の研究所に勤める宇佐見博士が探偵役の本格ミステリ短篇集ですが、美術や科学などの学問的な分野がモチーフとなっているのが、特徴です。
以下、収録の5編について、1.はモチーフ、2.は提示される謎です。
(いずれも、題名又は冒頭で示される事柄です)
【エッシャー世界】
1.美術(騙し絵)
2.殺人事件の犯人を指摘していると言う絵画の謎
【シュレディンガーDOOR】
1.量子力学
2.爆弾魔の予告する事件をどうやって未然に防ぐか
【見えない人、宇佐見風】
1.古代ギリシアの哲学者ディオゲネスの思想
2.どこまでも追ってくる声の謎
【ゴーレムの檻】
1.生命科学(人工受精)
2.監獄からの囚人の消失
【太陽殿のイシス】
1.古代エジプト神話(太陽信仰)
2.密閉された神殿からの脱出
2.の謎が解き明かされる中で、1.のモチーフがうまく事件と融合していくところが、本書の素晴らしい点で、その巧妙さに感心させられました。
個別の作品の評価ですが、やはり【ゴーレムの檻】が出色の出来。密室トリックの面白さもさることながら、その作品を成立させるための、「動機」も巧く描かれています。
次に、(巻末解説では作品名が明かされていますが)ある作品には、お遊びと言ってもいいような、本の装丁に関する仕掛けが隠されています。私は、かなり楽しむことができました。
非常に質の高い作品群であり、第一短篇集の「アリア系銀河鉄道」も読んでみたいという印象を持ちました。