小柳ルミ子の初期はほとんどがディスカバージャパン系の歌である。「土地」とか「家」を素直に受け入れる歌が多い。"周りが祝福してくれる貴方のところに明日私はお嫁に行きます"とか"田舎から都会に向かう汽車で貴方は旅立つけれど私は行けない"っていうシチュエーションである。"都会に出て行く恋人、残された私(僕)"ってのは守屋浩の「僕は泣いちっち」とか戦後の歌謡曲に幾らでもあるけど、ルミ子は、そういうモチーフをまるで総決算のように歌っていた。田舎→都会、一次産業→二次、三次産業、演歌→ポップスっていう大きなうねりの中で、消え行く側の最後の砦としてルミ子はいた。ルミ子→天地真理→南沙織は田舎→都会のベクトルに対応してる。フォーク、ポップス、ロックといった都会的で洒落た音楽が流行る最中に、けなげな心を持った親思いの娘、引き裂かれる実らない恋みたいな部分を歌うことにルミ子のアイデンティティーは確かにあった。
「私の城下町」や「瀬戸の花嫁」がマスイメージだと思うけど、平尾昌晃を離れてからの「冬の駅」(作詞:なかにし礼、作曲:加瀬邦彦)や「逢いたくて北国へ」(作詞:橋本淳、作曲:井上忠夫)といった曲もイイ!シングルの編曲はほとんど森岡賢一郎。ノスタルジックなギターを前面にフィーチャーした「冬の駅」や、イントロが「スニーカーぶる~す」同様「雨」で始まる「逢いたくて北国へ」は、まさに"歌謡曲"って感じで、しみじみ心に沁みますね。
ルミ子自身は、"洋風"な宝塚出身なのに、ディスカバージャパン路線、"和風ポップス"路線を歌うっていうジレンマがきっと長いことあって、今のダンス人生は納得ずくなんだろうけど、やっぱり"歌手・小柳ルミ子"に魅力を感じます。あれがまさに歌謡曲だもん。小柳ルミ子の変遷を見ているともう歌謡曲って成り立たないんだな、とも思いますが。こうして久々にちゃんとしたベストが出て良かった!