ポップ・アーティスト“PICASSO”の、シュールとノスタルジーのまばゆい饗宴、まさに“PICASSO”の面目躍如たる名作が目白押しのベスト・アルバム。無数の音の絵の具から必要な音色をもれなくパレットに取り出し、豪胆かつ繊細なタッチで音の絵筆をして語らしめ、きわめて透明感のあるサウンドで縁取りされた‘音の抽象画’を描き出すことに成功している。 各楽曲の音楽的個性の強さ、また、カレイドスコープのごとく、千変万化する楽曲の性格づけの鮮やかさ、稀にみるクオリティの高さは特筆に値する。
感傷の陰影と謎めいたデカダンス。ときには端正そのもの、ときには「迷宮のようなシュールさ」を示す“PICASSO”の音楽は、したがってとても奥が深く、当然、一筋縄ではとらえられない。その音楽には、矛盾を形象化し、人生の暗黒面を美しい虚構に転化させ、時間をかけて無自覚をある自覚へと目覚めさせる、その過程で深い癒しをもたらす、という魔法のような作用があるように私は思う。まるで、アルバム全体が、ひとつの迷宮のような廻廊をなし、壁には謎のような絵が飾られ、紆余曲折する通路を一巡した後にも、鮮烈な残像が目蓋にいつまでも残るような音のヴィジュアル性―。
この、マイナーなポップ・グループのスタイル、音楽観自体が、J-popsのひとつのあり方を最良の形で提示しえていることは、きわめて稀な美しい奇跡ですらある。もうそろそろ、“PICASSO”が再評価されてもいいころなのではないだろうか。