昭和天皇は昔テレビ等で写っていたので、知った気になってましたが、
本の帯に書かれた「日本史最大の巨人」という言葉が掛け値無しであるほどの
人物であったとは、全く知りませんでした。
本の内容としては、大東亜戦争の末期から戦後の時期を中心として、
天皇や戦争・敗戦に対する国民感情、昭和天皇の戦争責任、米国との駆け引き、
戦後の御巡幸により昭和天皇が国民に与えた復興への希望、
などが描かれています。
どの章もそれぞれにポイントがあり、それぞれ興味深く、また一部涙腺を緩ませながら
読んだのですが、私にとっての一番の読みどころは、最大の難局である大東亜戦争の
敗戦処理の部分(第4章:「聖断」という奇跡)でした。
当時の状況から考えて、軍部を中心とする徹底抗戦派の暴走の発生など、
敗戦時の混乱を最小限に食い止めながら速やかに終戦に導くことは、
大変に難しいことだったと思われます。
昭和天皇は鈴木貫太郎に首相の役割を託し、また鈴木は陸相に阿南惟幾を任命して、
この非常に難しい局面に当たりますが、混乱した状況と要人の思惑・駆け引きの中、
最終的に立憲君主制の元ではありえない昭和天皇の「ご聖断」が為されたことは、
ギリギリの状況の中で起こせた奇跡でした。(詳しくは本で読んでください。)
また終戦時期に、重要な判断・決断が適切なタイミングで為されていなければ、
日本は今のような平和な国とはなっていなかった可能性があったことが書かれてました。
・韓国・北朝鮮のように2つの国に分割されていた可能性
・沖縄が日本領土として認められなかった可能性
・米軍・GHQの統制により日本の文化・精神性が大きく損なわれる可能性
どの可能性も十分にあり得た中で、それらをうまく切り抜けてこられたこともまた奇跡でした。
しかしその奇跡は、昭和天皇がいたからこそ、もう少しきっちり書くと、
昭和天皇が非常に高度な政治的見識を持ち、かつ無私の精神で日本国民を思う
行動をされたからこそ起こし得た奇跡なのだろう、と思います。
戦後の御巡幸の話などで、昭和天皇の国を思う気持ち、国民への深い思いやりを
示すエピソードも数多く載っています。
私が若いときにテレビを通してみていた昭和天皇は、特に見栄えがしない
人のいい好々爺という印象しかなかったのですが、
本書読了後、昭和史における昭和天皇の役割は言葉では表現し切れないくらい
大きいことがよく分かりました。
ちなみに、小林よしのり氏のゴーマニズム宣言系の著書は、パッと見には
「右」的な思想を元にしているように見えますが、色々な視点からの
幅広く大量の史料を元に論理的に考察されており、説得力・妥当性とも高いと
思います。
星ですが、日本人であれば是非とも読むべき内容と思われましたので、
5つといたしました。