Ai(死亡時画像病理診断)を世の中に導入するために、ここまでするかと言うくらい、著者は奮闘努力している.言っては悪いが、著者の他の小説よりも、面白い(ごめんなさい、著者の他の本も沢山読んでいるという事で、お許しを).当たり前だが、この本は小説では無くて、実話だから、迫力が違う.著者が発想し、世界で初めて論文に書いたAiという考えを、日本にそして世界にひろげて行く様は、圧巻である.
著者が、Aiを広めるために、小説家となり、(それも、ベストセラーを連発するような)、そういう小説家となることで、世間を味方にし、マスコミを動かす力を得ようと絵図を描いたなら、著者は天才である.別に絵図を描かなくても、Aiを発想し、ベストセラー作家になるだけでも天才であると思うが..
詳細は省くが、日本では、いわゆる突然死の2%しか解剖されないのが現状であった.解剖を担当する医師がいないからである.死因不明社会と著者が呼ぶゆえんである.それを変だと思っても、良い解決方法が無かった.
中には、この本に出てくるリンチを受けて殺された力士のように、虚血性心疾患の誤診の下に、本当の死因が、闇から闇に葬られそうになったのと同様な死亡例も多いと思う.100%の解決法など無いが、2%よりも、ずっとましで、なおかつ遺族の承諾を得やすいAiが普及すれば、社会に公平感が増すであろう.そういう、今よりも、より良いであろう社会を作ろうとすると、如何に大変であるか、この本を読むと解る.多くの人々、マスコミの方々含め、小声、大声で色々と言っても、社会を本当に動かす事は出来ない.著者の様な、真摯で、文字通り命がけの覚悟、努力が無ければ出来ない事がわかる.この本は、希有な事に、表現者(作家)が社会を動かした数少ない例である.それだけでも、読む勝ちがある.著者には怒られるかもしれないが(私は著者の知り合いでも何でも無いが)、著者の本の中で、一番面白く、しかも為になった.T大の先生が出てくるが、それが、全てではないし、それは刺身のつまのような物である.それよりも、社会を少しでも動かそうとすると、これだけの努力、才能、時間がかかるのだという事が良く解る.それが、解るだけでも、良い本である.皆さん読んで下さい、大げさに言えば、人生観が変わります.良い本です.