ベトナム戦争直前のサイゴンを舞台に、失踪した同僚の行方を追う、主人公がスパイの世界に巻き込まれるというメインストーリーに、同僚の妻と浮気をしている主人公の葛藤や、太平洋戦争の後ベトナムに残ることを選んだ日本兵の話などが盛り込まれています。
かなり強引な比較かもしれませんが、サマセット・モームの「アシェンデン」にも似た作品で、ハリウッドエンターテイメント的な大きな謀略が描かれるというよりも、決して全貌が明かされるわけではない、歯車しての末端のスパイの悲哀といったものがえがかれています。
従いまして、現代のエンターテイメント作品に良くある、普通の人がふとしたことからベトナム戦争の帰趨を左右する極秘情報を入手する・・・といった派手な展開は期待しないほうが良いでしょう。
その代わりに善悪定かでない中で、陰のある登場人物たちが織り成す、濃密な物語を堪能できるでしょう。