登録情報
|
この本は、これまでの著者の現地での体験、生活、取材活動などを通じ、「外国を勉強する」というのはどういうことなのか、そのためにはどういう姿勢で臨むべきなのか、などについて、多くの実例を挙げ、独自の、説得力ある解釈を試みている。その際に使われているのが、この本のタイトルの一部にもなっている「ゴム時間(jam karet)」という物差しである。これはインドネシア(人)特有の時間の観念で、状況に応じ、自由に伸び縮みするもので、彼らの仕事や生活全般を支配している。著者の好奇心は、日常生活に留まらず、インドネシアの歴史、政治、宗教、慣習など、あらゆるジャンルに及ぶ。
著者は指摘する。「インドネシアの実態を理解しようとするには、これまで自分が抱いてきたインドネシアに対する思い込みや一般常識を捨て、その本質を直接対象に問うべきである」と。言い換えれば「松のことは松に問え」「木を見て森を語るなかれ」ということであろう。そうした姿勢で対象に目を向ければ、民主化の旗手だったメガワティ大統領が宿敵だったはずのゴルカル党(スハルト政権の支持基盤)や国軍と手を結んだり、石もて国民に追われたはずのスハルト元大統領のニコニコした表情がテレビに流れたり、と、読者には「理解しがたい」インドネシア情勢の謎も読み進むうちに次第に解けてこよう。新聞の大統領選挙を巡る表向き報道の理解もぐんと深まるだろう。
読者は「ゴム時間共和国」の旅人となる。普段見聞きできない世界や情報を垣間見ながら、いつしか「ゴム時間」に馴染んでいく自分を感じながら。しかし、どんな状況に遭遇しようとも、著者の対象を見る眼差しはあくまでもやさしい。インドネシア初心者、自称インドネシア通、それからインドネシア専門家にもお奨めしたい一冊である。表紙や挿絵に使われている装画は、著者の友人の作で、インドネシアの街や日常の風景をそのまま切り取ったもので、なつかしさと親しみを感じさせる。
|
この商品のクチコミ一覧
クチコミを検索
|
関連するクチコミ一覧
|