通常ゴジラシリーズではワーストからカウントしたほうが早そうな評価の作品だが、個人的にはベスト3に入れているひとつ。
ゴジラを大人向けだと勘違いしている人たちには最初から子供向けに作られたというだけでそっぽを向かれている感があり・・・
加えて過去の作品からの特撮シーンの使い回しが安っぽく評価されるようだが・・・
そもそもこの映画は他のゴジラ映画と決定的に違って、観客同様、実際には怪獣が存在せず、「ゴジラ」映画を見ている世界が舞台なのである。
怪獣が登場するシーンはすべて少年の頭のなかであり、少年は自分世界で見たゴジラ映画を自分の想像の中で反復しているのだから、過去の映画の使い回しを使って当然・・・いやある意味そうでなくてはいけないのだ。
本編そのものはそこへさらに少年独自の世界観を追加した怪獣ワールドと少年の日常を描いてゆくのだが、注目すべきはファンタジーワールドが少年の現実世界での行動に影響を与えているところだろう。映画のクライマックスで少年は大人のギャングに立ち向かうが、その勇気を与えたのはやられてもやられてもガバラに立ち向かってゆくミニラの姿だった・・・しかし、それは少年の想像した世界なのだ。
普通の物語は主人公の決断には同じ世界に属している周囲の登場人物の影響があり、彼らのため(妻子のため、親のため、自分のため)に勇気を奮うというパターンが定番な中で、この映画の場合、現実の人間は少年にほとんどポジティブな影響をあたえず、少年個人の想像力だけが彼の勇気の源になっている。
これはなかなかできないことだ・・・しかし気がつけば想像力には何もない、誰もいないところに力を生み出すパワーがある・・・
もっとも、実際は何もないわけではない、少年には「ゴジラ」映画があり、ほかにも力を与えてくれる物語がある・・・これも想像力の力だ。
他の多くの作品(特に「宇宙大怪獣ガメラ」)のように過去の特撮シーンを新作の一部として同じ土俵にのせてそのまま使い回してしまうことをよしとせず、逆境を逆手にとってゴジラ映画史上唯一のメタフィジカルな作品に仕上げてしまった本田猪四郎監督の映画職人としての意地と技の匠、そして優しさを感じさせる名品。これを傑作といわずして何と言おう。