著者の1991年から2002年までのコラムの集大成なのですが、なんと言う時代の記録でしょう。ちょうどバブル崩壊後の日本の歴史が同時代進行の形でもう一度追体験ができるというわけです。紀元暦を呈示している著者の視点はユニークです。
でも全編を通してみると、どういうわけか、政治思想の研究者である著者の政治や経済の領域でのコラムはどちらかというと奇をてらったものが多く、ニヒリスティックなdevil's advocateの域を出るものは余りないようです。
予想されたとおり、映画、音楽やスポーツの領域でのコラムがやはり生き生きとしています。特に、映画や音楽(特に日本の戦前の作品)については、これまで「不思議」な理由で戦後は抹殺されていたさまざまな作品が持っていた斬新さと歴史性が豊かに語られていきます。
もっともすばらしい部分は、物故した日本の俳優にささげられたobituaryです。コラム執筆時は存命だった人々もだいぶ鬼籍にはいられた現在から見ると、執筆時はobituaryでなかった俳優論も今では、すべてobituaryのようなものです。限られたスペースの中で、個々の俳優の個性とそれを生み出した歴史の積み重ねが丁寧県に語られていきます。森繁久弥、ミヤコ蝶々、志村実、萬屋錦之助、山岡久乃、勝新太郎などの今はもういない俳優たちが,彼らが背負った歴史の積み重ねとともに見事によみがえります。
274ページの「千人の..が町に繰り出せば日本は元気になる」のオープニングは見事な指摘ですが、いったいどこで著者はこんなことを聞いたのでしょうかね。