哲学に対して<反>哲学的思惟をもって、<近代>の思惟の特徴を考察しようとしたのがミシェル・フーコーならば、レム・コールハースは、まさに<反>建築的思惟で建築を実行する。それはマンハッタンの摩天楼の歴史を斬新な史料読解で解釈した剋目すべき著書「錯乱のニューヨーク」の神話で既に実証されているとはいえ、彼の著書が注目を浴びるのは、建築作品自体のコンセプトがたえず反目・対立関係の中で並行して進行してゆく悪夢が現実にあるからに他ならない(p.24)。常人ならばとっくに狂人か廃人になっていよう。既成概念を徹底に破壊しながら、基本構造で辛うじて存在しうるような空間でありながら、反作用を利用した柔軟で単純な構成が物理的に強化される、この計算されつくしたかのような危うさが彼の魅力かもしれない。その力学を判りやすく語ったのが本書である。凡庸な見方を破壊し続けることが彼の知的源泉なのであろう。実行力を行使できる構造主義者なのであり、フーコーとは同類の思想家と云えよう。ちょっと読み足りない感じがするのが、惜しい。