著者は語る。
「企業の差別化は、ビジネスモデルよりも、むしろコミュニケーションモデルによって体現されて、コーポレーションコミュニケーション活動を通じて、コーポレーションブランドが構築される」
これだけ聞くと、いつものお題目・・・と失望される方がいらっしゃるかもしれないが、ちょっと待って欲しい。
この著者は信じている。
「広報戦略こそが会社を変える」ということを。
そのことが、理論的に武装された文章に導かれながら、臨場感を持って語られる広報活動例の中で見て取れる。
それはかつて総研という名をとどろかせていた自社(野村総研)が、情報システム開発企業としてのその膨大な実績のゆえに、大きなITシステム会社としての他社との差別化のできないイメージが先行する大企業になってしまったという印象をもった点(この判断にも綿密な広聴調査結果があると思われる)から、シンクタンクやコンサルティングといった「総研」としてのブランディングを再構築し、各人のモチベーションをあげるために取り組んだ「2010年キャンペーン」。これは、「2010年、日本の未来を提案します」というキャッチフレーズのもと、2010年の未来予測、技術予測、市場予測を綿密な取材とともに、自社の社員(若手アナリスト)が共著として、大手出版社から書籍化し、2006年時点において、シリーズ10冊、総計10万部以上というビジネス書籍シリーズと発刊である。一介のビジネスマンがこんなことを組織として企画して、こんなことができるんだと、私はこれから企業に入る若い人たちに伝えたい。一介のビジネスマンたちが、広報(コーポレートコミュニケーション)という「経営に至る戦略」を練り、それを実践する上でこんなにダイナミックなことが実現される、そのことがビビットに伝わってくる。
もちろん、カルロス・ゴーン社長が就任した日産自動車の社内外におけるコミュニケーション戦略のすごさや、メディアリレーションを行う上でのノウハウ、また、ガラパゴスと著者が呼ぶ日本のコーポレーションコミュニケーションの問題点への洞察など、ついつい、電車の中で読んでいても一駅ぐらい飛ばしてしまうほど、わくわくページをめくってしまう、すごい本であることは違いない。
しかし、繰り返すが、それ以上に、この本の面白さは、「経営と同義語といえるようなコーポレーションコミュニケーション」への実践の書であるからだろう。
この本は、今の時代に、会社に希望を持てなくなっている同世代の方々や、これから会社に入る前の若い人たち、どちらにも読んでもらいたい一冊。
広報こそ経営。そして、経営することは人や社会とコミュニケーションする組織(=人の集合体)を動かすこと・・・、
50歳代でもまだまだ何かができるぞという勇気と戦略的な思考を与えてくれる稀有な本である。