逝去された標氏への追悼の意を込めて出版されたものと思われる。
焙煎コーヒーにとり憑かれた名人・標氏の人生を中心に,お弟子さんや他の名人のコメントなども絡めて,何かに「達する」ことを描いている。
その点では,リンゴ農家の木村明則氏を描いた石川拓治著「奇跡のリンゴ」と同様。
「狂う」ことなくそうなる道もあるとは思うが,やはりなにかに達するには,少なくともある程度の期間,ある程度の深さまでは,「狂う」ことが近道なのだろう。
著者の思いが余ったのか,いろんなことが書かれすぎていて焦点がぼやけてしまっていることや,スノッブを馬鹿にする著者の表現自体にスノッブな香りがしたりする点は残念に感じたが,それ以上に一人の「達人」の人生に触れさせてもらったことがありがたい。