主人公のミフネ・リュウセイ(22歳)は旅する若者、深刻さのカケラもなく、ルックスは優れており、恋人はいない。
動作は緩慢、ときどき俊敏な猫並みの身軽さで、特別パリが好きというわけでもなく、パリの街に滞在しつつ、愚劣な大道芸で小銭を稼ぎ、日々のメシ代にあてている。
可愛い男前になら必ず起こりうる数々のエロな経験や、のらくら者が巻きこまれやすい暴力がらみのダークな出来事が、いろいろと彼の周りで起こるのだが、それらエピソードが、いずれも話として面白い。
ほんのひととき自らヒーローを気取れる絵巻物として。
彼は、バアさんやデブでブスの女たちにも好かれる、というか強烈に惚れられてしまう。
たぶん、可愛さとはこういうことを言うのだ、男としての。
そして、軽さを身に付けるまでもなく、沁みついている男。
ああ、こうなりたい、という「リュウセイ願望」が天から落ちてきて、感じるトコロがあるだろう。男性読者であればの話だが。
で、女性読者はどう読むのだろうか、という点に関しては、おそらく日本人留学生のマジメそうなギャル(眼鏡・三つ編み)に感情移入するのではないか、とね。
彼と一夜限りのマチガイを犯したあと、「でもこれでふたりが恋人に…なんてことは絶対にないと思うので」といいわけしつつも、その後、「リュウセイくんってさ……冷たーい」とアピールしてしまう女心。