本書では主にこれまでの日本のスポーツにおけるコーチング技術の問題点が論じられ、そしてそれを改革しようとする新しい世代のコーチ達の努力が紹介されている。そういった意味で本書はスポーツ指導に携わる人向けの本であるといえる。しかし、本書における議論は現在のスポーツ界においても問題視されており、真新しいものではない。むしろ、本書を読むべきなのはスポーツ指導に携わらない人なのではなかろうか?
本書が提起する日本のスポーツ指導の問題点、つまり、しごきや無意味な精神主義など、は日本のスポーツ指導に限られる問題ではない。学校や企業といったもっと幅広い場所でも見られる問題なのではないだろうか。つまり、本書は日本における教育もしくは様々な指導の方法論に対する問題提起の書としても読むことができるのである。もちろん、精神主義的な指導やしごきの全てが否定されるものではない。しかし、精神的な指導やしごきといったものがそれを受ける側にどういった効果を及ぼすのかを本書はスポーツという事例を通じて明確に示してくれる。教師や企業において指導的立場に立つ人は本書を通じて自らの指導が指導を受ける側にどういった効果を及ぼしているのかを考えるきっかけを与えられるに違いない。その点で本書は日本の「コーチ」全てに鋭い問題提起をしていると思われる。
スポーツという比較的とっつきやすいテーマを扱っているため、非常に読みやすく、色々と考えさせてくれる本だ。