コーダ(CODA)とは、あまり聞き慣れない言葉ですが、Children Of Deaf Adult、すなわち、聞こえない親をもつ聞こえる子どもたちのことです。聞こえない夫婦の子どもの90%は聞こえると言いますから、コーダの問題は、ほとんどの聴覚障害者に関係があります。著者の澁谷智子さんは、このコーダの研究をずっと続けておられ、東大大学院総合文化研究科での修士論文も、博士論文もコーダをテーマにしたものですし、前に「聞こえない親をもつ聞こえる子どもたち」という本も翻訳されています。
大学院生と2児の母という2つの仕事をこなしながら、多くのコーダの人たちに会って、そのインタビューなどをもとにまとめられたようです。とても読み易い文章で書かれており、それにも拘わらず、ところどころに社会学的な考察が散りばめられており、読み応えがあります。
子ども時代のコーダの状況や気持ち、思春期でのコーダのおかれている立場、大人になったコーダの親や社会を見る目などが丁寧に書かれています。更にろうの両親が聞こえる自分の子ども(コーダ)に抱く気持ちや見方を通して、ろう者が聞こえる世界に抱く本音なども描かれています。
コーダを通した「ろう文化」の見方も、また興味深いものです。ろう者の生活の仕方に対するコーダとしての肯定的、否定的な見方の揺れや悩みが書かれており、そうした面でも面白い本です。