結論から書けば、KOEIの過去の競馬ゲームの中で最も評価できない作品である。
馬主・騎手・調教師の三職のプレーは、それぞれ極めてゲーム性の薄い仕上がりとなっている。筆者は過去のウイニングポスト、ジーワンジョッキー、Horse Breakerなどの各シリーズは全てプレーしてきたが、比較するのも過去作品に失礼な出来である。馬の能力設定や作りこみもお粗末だが、本作品の特徴、というより複数ある欠点の1つは、プレイヤーのステータスの成長によって展開が左右される場面が大きすぎることにある。
プレイヤーの能力を最高まであげた場合、馬主モードであれば、
・どのような配合を行っても、強い馬が産まれる
・どのような能力で産まれても、強い馬になる
調教師モードであれば、
・すぐに限界まで育ってしまい、強い馬になる
騎手モードであれば、
・どんな馬に乗っても、簡単に勝てる
という具合になる。結果として1つ1つの場面や、1頭1頭の馬に個別に対応する必要が殆どなく、順番にボタンを押していくだけ、という展開になりがちなのだ。
複数のキャラクターとの関わりがプレー出来る「シナリオモード」に関しては、1回目は「遊べる」レベルにはなっている。しかし2回目以降のプレーに耐える出来ではない。元々が上述の通りゲーム性に乏しく、1プレー目で充分にコツを掴むことが出来るため、2回目以降は「名馬カード」や「アイテム」収集、1回目で見損なったイベントの回収くらいしかやることがない。
これはRPGでアイテム集めやモンスター図鑑の収集に熱中できるタイプの人には多少楽しめるかもしれない。しかし効果の高いアイテムや名馬カードが欲しいだけなら1回目のプレーでも回収可能である。他にも、2回目以降は「定期イベントの短縮」が行えるのだが、分岐で(といっても結末は同じという大雑把なものだが)体験していない台詞まで短縮されてしまうのが難点だろう。短縮用の展開説明を書き下ろす位なら、既読の箇所をスキップする機能でも付けた方が良かったのではないか。
「ワールドモード」にいたっては、イベントも起こらず、出てくるキャラクターも没個性的だ。せっかく「シナリオモード」で印象付けたキャラクター達が、他のキャラクターと同じ台詞で登場してくるのである。また、最終目標(年度表彰)も簡単に達成できるのも寂しいところだ。さらに、馬のデータなどは全て数値が視認できるので、レースにも驚きが全く無い。自らに制限を課してプレーしようにも、目標そのものを定め難い仕上がりとなっている。
馬のデータにしても、公式ブログでは「ロジユニヴァースやブエナビスタも登場する 『最新データ』」をうたっているが、同じ世代に「サードステージ」などシリーズお馴染みの「架空馬」が登場し、ロジユニヴァースらをちぎる内容である。中途半端に架空馬を出すくらいなら、他馬の能力が全く読めない架空世代でプレーする選択肢などがあっても良かったのではないだろうか。
なぜこのような出来になったのだろう。4gamer.netの取材記事によれば、「より間口を広げた競馬シミュレーションゲームを作りたかった」という狙いと、従来作が「なかなか新しい層を呼び込めていないというジレンマ」があったとのことである。筆者にはその間口の広げ方が最大の問題であるように思う。
例えば新たに取り入れた「音声実況」。実況の声自体は決して悪くない。一二度公式サイトの「仮想実況レース」を聞いている限りでは、殆ど難を感じないだろう。しかし実況に読ませているテキストが問題である。これは従来作品からの使いまわしで、かつパターンが少ない。本馬場入場で同じ紹介が何頭も続くのは極めて奇妙だし、「坂を登っていきます。坂の下り、坂を下っていきます」といった京都競馬場第三コーナーの実況にいたっては何を説明したいのかよくわからないのだ。これが同じ競馬場であれば何回も続くのである。
初心者には全くお勧めできないことも、書いておく必要があるだろう。マニアックな競馬用語の解説などは「シナリオモード」でも多少見受けられるが、基本的な「競馬ってどんなスポーツなの?」「馬ってどんな生き物?」「馬主(騎手・調教師)って何?」というところから説明する「チュートリアル」的なモードはない。これでは従来の作品を遊んだ経験があるか、ある程度競馬に詳しくなければ意味がわからないだろう(しかしそれなら従来の作品の方をプレーしていた方が楽しめるはずだ)。「シナリオモード」の馬主版などは、せっかく競馬に1から携わる設定なのだから、いっそ定期イベントは競馬解説と割り切っても良かったのではないか。
かといって本作は、競馬ゲームに詳しい人にもお勧めできない。最大の欠点はデータ量が少ないことだ。各馬の戦績は、一定期間を過ぎると以前のものが無くなる。他馬主の持ち馬の血統が見られない。父系統の分け方も極めて雑だ。こうした変更が「間口を広げる」ためであるのなら、大きな間違いだと思う。データは知りたくないなら見ないことはできるが、知りたくなったときに見られないのは困る。見せなくても楽しめることをアピールしたいのであれば、表示を切り替えるモードを用意するなど手はいくらでもあるだろう。
先に「KOEIの過去の競馬ゲームの中で最も評価できない」と書いたのは、これらの欠点に加えて、これまでの作品と比べた場合に、取り立てて「良いところ」を見出せないところにある。そのことが、これまでのKOEIファンとして何よりも残念で、哀しいことだった。さしあたって次回作までの様子見をお勧めする次第である。